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バンコク便り

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第17回「アーサーに向いている職業とは?」

アーサーに多い職業はバイクタクシー運転手など

 ボランティアとして活躍するアーサーたちは一体どんな仕事をしているのか。報徳堂を直接知らない人ならどんな人たちが働いているのだろうかという疑問もあるだろうが、長年やっている僕自身も「この人たちは一体どうやって生活しているのだろうか」と思うことがしばしばある。
 ボランティアは報徳堂の担当日であれば参加は何時でもいい。帰るのも自由だ。しかし、多くは昼間働いているので夜間に待機に入る。待機も担当日が終わる朝8時ごろまでいる人もいて、眠らずに働きに出かけ、一晩明けてまた次の担当日に現場にいる。そんなに寝ないでも生きていけるのかということに、長く寝ないと疲れの取れない僕はいつも思うのだ。
 では、実際にどんな仕事をしている人が多いのか。僕が所属するホワイクワン隊の大半はタクシーやバイクタクシー、会社のバイク便担当、自営業者など、わりと自由な仕事に就いているケースが多い。タイ人は基本的に人にとやかく言われることを嫌うタイプばかりで、本来は会社員に向いていない性格の人ばかりだ。タクシーは自分で車を買えない場合は小規模の会社などから半日もしくは1日借りて、賃料と燃料代を差し引いた利益を手にしている。なので、完全に自営業というわけではないのだが、誰に命令されることなく働ける。バイクタクシーもグループ(各ソイなどにいる待機所)に所属しないといけないのだが、会社員よりは自由が利く。給料は少ないが、残業もないし、精神的に疲れないというのだ。なので、アーサーになる人はがっちりとした会社員よりは時間に自由な仕事が向いているのかもしれない。
 一方で、会社員や銀行員、会社社長もいないわけではない。僕も今でこそ自営業のようなものだが、かつては会社員をやっていたし、タイ企業の営業マンもいた。会社社長クラスになるとお互いがギクシャクする姿をよく見かける。ホワイクワンにいる会社社長は僕とそんなに歳が変わらない人だが、育ちが全然違うというか、紳士的な人柄である。かたやタクシー運転手やバイタク運転手は地方出身だったり、近所の元は不良みたいな連中だ。お互いに共通の話題がないし、持てあましてしまうようである。

2016年1月現在で若干名の職員募集が
2016年1月現在で若干名の職員募集が報徳堂本部から出ている。


好きだからやれるのがアーサーという仕事

 ホワイクワンのチームで変わった職業というか、よくやっているなと感心するのは、戦勝記念塔前にある24時間救急も持っているラーチャウィティー病院の職員だ。彼はまさに救急救命の外来引き受けの下っ端職員をしているのだが、ときどき我々が傷病者を搬送すると、彼が夜勤でその担架を引き継いで治療室へと搬送していく。要するに、彼は毎日病院で傷病者を受け入れ、夜はレスキュー、夜勤のときは昼間は休んで夜に傷病者を受け入れるといった感じで働いているのだ。救急救命が好きなんだろうなと思う。
 ただ、この好きだという気持ちはやっぱり大切ではある。ボランティアなので当然ながら金をもらっているわけではない。ときには不衛生な環境で長時間応急手当などに追われることもあるし、腐乱死体の現場はきつい臭いが充満する。好きでなかったらできない仕事だ。タイ人はわりと建前がある人種で、日本人のそれよりももっと狡猾だったりする。レスキューに関して狡猾さはないのだけれども、テレビや雑誌のインタビューでは型にはまった台詞を語る傾向にある。例えば、なぜアーサーになったのかという質問には、
「人々の役に立ちたく、タンブン(功徳)も兼ねています」
 といった内容を形を変えながら答えていく。タイのテレビ番組もネタ切れのときは報徳堂に密着して現場の様子やアーサーに迫るのだが、毎回同じような回答しか得られないのによくやるものである。
 その言葉に大きなウソはないのだけれども、本音の部分ではやっぱり事故現場や救急車などのサイレンで興奮するし、楽しいという気持ちが入っている。もちろん功徳などの意味もあるし、実際に役に立っているから、趣味と実益を兼ねていてなんら悪いこともない。
 好きが高じて、そのまま報徳堂に就職する人もいる。ホワイクワンからも数年前にひとり本部に就職して、今は救急車部隊に所属している人がいる。実は報徳堂などの本部隊員は結構人気の職業で、若干名の募集に数十人の応募が入る狭き門である。タイは離職率が高いなどとよく言うけれど、こと報徳堂に関してはそれは当てはまらず、一度入ったらなかなか辞めない。なので、募集もほんのわずかしかない。ちょうど今月頭に募集が始まっており、レスキュー隊員はないものの、救急車運転手1名の枠がある。ちなみに、ほかは整備士や事務員などで、特に経理部門などは中国語の読み書きもできなければならないなど要求スキルは高い。
 レスキューが好きなくらいなので、人柄は決して悪くないと思う。性根が腐ったような人間がわざわざ寝る時間を削って、自分の懐から金を出してまで人を助けるとは思えない。僕自身が見てきた中では、レスキューに関わっている人たちはみな人はいい。気さくだし、いい奴ばかりだ。ただ、口は悪い。言葉遣いが悪いので、一見柄が悪く見えてしまう。でも、本当にレスキュー活動と報徳堂が好きでやっているので、根はみんないい人ばかりである。


アーサーたちは仲間意識が強い
アーサーたちは仲間意識が強く、旅行に一緒に出かけることも多い。

垂れ幕などをチームごとに制作することもある
報徳堂への所属意識も強く、こういった垂れ幕などをチームごとに制作することもある。



タイの社会の仕組みが凝縮されているのが報徳堂の環境

「アーサーは基本的にいい奴ばかりだ、口は悪いけれども」
 実はこの部分にタイの社会というか、見えない階級制が浮き彫りになる。
 タイ語は書き言葉、話し言葉、フォーマル、王室、友だち同士の会話など、それぞれが全部違うと言っていいほど、単語が違っている。最近日本のネットニュースで見たのだが、女子高生などがケータイメールで「激おこぷんぷん丸」といった単語を使うという。激怒している様子を表しているのだが、これは日本人なら初見でも概ねの意味は伝わると思う。しかし、タイの場合は全然繋がりがなく、訊かないとどんな意味かわからない単語が多い。若者言葉だと例えば暴走族の男にくっついてくる女の子を「サーウ・スゴイ」と呼ぶ。サーウは女の子という意味だが、スゴイは若い世代が観ていたアニメの登場人物が口癖で日本語の「スゴイ!」と言うところから来たらしい。こうなると年寄りがサーウ・スゴイと言われてもさっぱり見当がつかないだろう。
 推測だが、タイ語は文字が簡単(日本語でいうひらがなしかない)なので、単語を変化させず、新語ができるのかなと思う。かつて歌手の安室奈美恵を真似する女の子をアムラーと呼んだけれど、そういった変化ではなくサーウ・スゴイのように新しい言葉が登場するのがタイ語なのだろう。元々書き言葉も話し言葉も違うので、日本とは言語の進化の仕方が違うのかもしれない。
 タイ語はそんなところがあるので、どんな言葉もしくは単語を遣っているかで、その人物がどんな人であるかが概ねわかってしまう。
 アーサーの口が悪いのは、タイの階級的には下に属しているからだ。インドのようにカースト制度ではないにしても、タイには経済的な階級が強く存在し、富裕層、中流層、貧困層が明確に分かれている。中の下と貧困層にアーサーになる者やなりたい者が多く、富裕層のアーサーというのはほとんどいない。いたとしても、形だけの入隊ばかりで、実際の活動にはあまり参加してこない。僕のチームにいる会社社長は例外的な存在だが、そういう身分の違いもあるからこそ、互いに戸惑っているという裏の事情もあるのだ。
 タイでは金持ちが下っ端をこき使って働かせるというのが当たり前の図式になっている。みんなが平等ではないのが常識なのだ。なので、報徳堂も金持ちが寄付をしてタンブンし、金がない中流以下が体を張ってタンブンしている。こういった事情もあって、報徳堂はタイでも大きな組織であり、警察などとも関係した活動をしていながら、政治的や法的に強い影響力がない。本来ならば国が自ら推進しているはずの救急救命活動を報徳堂などが100年も前から行っている。国が救急車を持ち始めたのは1990年代に入ってからだ。そのため、緊急車両を優先する法律などもできていないし、報徳堂のために政府が動くことだってなかった。
 そういうこともあって、アーサーは自営業者やタクシー運転手、バイクタクシーなどが多く、会社員も外資系などのエリート的な人はほとんどいなくて、せいぜいタイ企業の社員くらいでしかない。アーサーに向いている職業というよりは、アーサーに向いている階級というのがあるのである。

貧困者層への定期的な支援活動
貧困者層への定期的な支援活動にもアーサーは積極的に参加する。

敬虔な仏教徒も多い
敬虔な仏教徒も多く、お守りであるプラクルアンや刺青のサックヤンに詳しい人もいる。

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  1. 2016/01/15(金) 14:41:33|
  2. 報徳堂
  3. | コメント:0

プロフィール

bangkokdayori

Author:bangkokdayori
●プロフィール
高田胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター
報徳堂ボランティア隊ホアイクワン005

1977年東京生まれ
1998年初訪タイ。その後旅行で何度かタイを訪れ、2000年から1年間、ユニオン・ランゲージスクールに語学留学
2002年9月からバンコク在住
2004年11月から華僑報徳善堂にボランティア隊員として参加
2011年2月に彩図社より「バンコク 裏の歩き方』(皿井タレー共著)、2012年8月に同社より「東南アジア 裏の歩き方」を出版
現在はバンコクに編集部がある月刊総合誌「Gダイアリー」に複数の連載やほぼ毎月特集記事を、ウェブサイト「日刊SPA!」やバンコクの無料誌「DACO」にて不定期で執筆中

http://nature-neneam.boo.jp/

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