バンコク便り

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第20回「報徳堂のサラブリ支部にお邪魔してきた」

日本人3人目のボランティア隊員

 現時点で報徳堂に登録されているボランティア隊員のうち日本人はふたりいる。僕自身と同じチームに所属する年嵩の僕の友人だ。ただ、この人は忙しくて参加できないため、うちの隊長が怒って登録抹消に動いているので、実質的には僕ひとりと言ってもいい。
 しかし、人種でいうと日本人登録は3人になる。タイはタイ族だけでなく、中華系、インド系、山岳民族、マレーシアやベトナム系などの近隣諸国の系統など多民族国家になる。そのため、公的な書類にも「サンチャート(国籍)」と「チュアチャート(人種)」という欄がある。もうひとりの日本人ボランティアはタイに帰化した日本人、いうなれば日系タイ人となる。報徳堂の登記上もタイ人になっている。
 この人物が所属しているのはバンコクから北へ約130キロにあるサラブリ県の報徳同支部になる。タイ中央部の端にいるこの方を訪ねて、サラブリの活動に一晩だけ参加してきた。
 報徳堂3人目の日本人ボランティア隊員は湧上和彦さんだ。1966年に沖縄で生まれたが、3歳で両親の都合によりタイに移住。両親は農業関係の慈善事業のためにタイに来たので、そのまま湧上さんも居住を続けている。すでにタイでの生活が48年目に入っていて、日本語は普通に話せるし、タイ語も現地人と同じイントネーションで話す。
 レスキュー活動で大切な道具は無線だ。タイの無線はコード番号が多くて内容を理解するのが難しい。ただでさえ外国語なのにコードも多いし、無線機だと抑揚がなく聞こえるためにそもそもタイ人でも不慣れな場合は聞き取りができない。これだけは今でも僕は不慣れなままでいる。
 しかし、湧上さんはこれをさらっとやっていた。むしろほかの隊員よりも積極的に無線で会話をしていたので、正直僕は悔しかった。ずっとタイで暮らしていたし、湧上さんは10代のころから無線をいじっていたマニアだったそうなので、僕なんかが追いつけるようなレベルではないのだけれども。
 湧上さんはタイに来た当初はバンコクにいた。1988年になってこれもまた両親の都合のため、家族でサラブリ県に引っ越してきた。そんな湧上さんが報徳堂に興味を持ったのは実はごく最近のことだった。当然存在は知っていたが、ボランティアというのがあることもよくわかっていなかったという。結局、タイで暮らす人にとってはボランティアによる救急救命活動はその程度しか知られていないということだ。
 湧上さんは2001年ごろに農業関係の製品を扱う会社を設立した。タイ人は仏教の教えから功徳をよく積むが、個人だけでなく企業も社会貢献を当たり前のように行う。まるで欧米のように慈善活動の考え方が進んでいる中、湧上さんの会社でもプーケットでの津波や洪水などで直接、あるいは間接的に支援を行った。特に洪水災害のために報徳堂サラブリ支部におよそ240万円相当の小型ボートと発動機を寄付したりもした。それでもなお、湧上さんは報徳堂のことをよく理解していなかったそうだ。
 そんな湧上さんがボランティアになったのは報徳堂サラブリ支部の幹部と趣味のバイク関係で知り合うきっかけがあったからだ。その後、誘われてボランティアに参加することになった。今では報徳堂本部にいる正規隊員とも仲がよく、10年以上やっている僕よりも報徳堂内に知り合いが多い。

湧上和彦さん。
タイに来て48年、タイ国籍を取得している湧上和彦さん。


トラブルを事前に牽制する。
サラブリ県内のチームを湧上さんが訪問し、トラブルを事前に牽制する。



バンコクとサラブリの大きな違い

 湧上さんの報徳堂サラブリ支部でのポジションはボランティア隊員のひとりというよりは相談役のような存在になっている。
 サラブリ支部や他県の報徳堂の支部がバンコクの本部と大きく違うのが、管理者を含めてボランティアしかいないという点だ。本部は正規の職員らがいて管理などをしているし、警察直属の指揮下に入るのもまた正規のレスキュー隊員で、あくまでボランティアは補助要員である。しかし、他県ではボランティアが支部を運営し、主体となって活動している。
 この点はバンコクと大きく違い、僕も湧上さんに話を聞くまでは知らなかった。そんな環境にあるので、湧上さんは年齢的にも社会的地位でも普通の若いボランティアよりは上になるので、相談役としてのポジションをあてがわれたのだ。
「ボランティアで人助けをするわけですから基本的にはいい人ばかりなんですが、中には短絡的な人間もいます。サラブリ支部が県内のボランティア隊員を統括していますが、人間関係に幹部はいつも頭を抱えています」
 と湧上さんは話す。サラブリ県の報徳堂は支部本部を中心に警察署管轄ごとにチーム分けされている。サラブリ県内だけでも現在は総勢で610人にも上る。ボランティアの救急車も50台もの登録があって、バンコクよりは小さいといっても大所帯だ。そうなれば隊員やチーム間のトラブルはあとを絶たない。
 そこに現れたのが湧上さんというわけだ。タイ人は外国人を部外者として見る傾向にあって、表面上は仲よくしていても内心では一線を画している。サラブリ本部のタイ人幹部がトラブルの仲介に立つと角が立ってしまうが、日本人として扱われている湧上さんが間に立てば意外と言うことを聞いてくれる。タイ人は人間関係の立ち回り方が上手な国民性がある。サラブリ支部幹部も湧上さんをうまく利用しているようだった。

チームによって待機場所は違っている。
チームによって待機場所は違っており、ガソリンスタンドもあれば、路上、コンビニ前、警察署敷地内など様々。


発電機と照明セットを持って救助に当たる。
地方だと暗闇も多いため、発電機と照明セットを持って救助に当たるチームもある。バンコクでは考えられない装備。



未成年者が報徳堂に参加する意義

 僕がサラブリ支部での活動に参加した日は結局なんの事件も起こらなかった。その代わり、各チームを表敬訪問し、いろいろと事情を聞かせてもらった。そこで知ったのがまず報徳堂サラブリ支部にはボランティアしかレスキュー関係者がいないということだった。
 そしてもうひとつ、バンコクとサラブリで決定的に違う点があった。
 それは、サラブリでは未成年者がレスキュー活動に参加していたことだ。
 バンコクでは20歳以上の者で、かつ応急処置訓練初級コースを修了していないとボランティアに申し込むことすらできない。未成年者もときにバンコクの現場で見かけるが、それは隊員の実子が親の監督の下で一緒にいるだけだ。それがサラブリでは未成年者が単独で活動に参加していた。湧上さんが改めて説明をしてくれる。
「サラブリ支部では20歳未満は親の承諾書を添付すれば登録が可能です。親もバイクで暴走したり、アルコールや麻薬に走るよりはいいということで参加を許しています」
 タイの地方では中学生がバイク通学することは珍しくない。免許証の取得可能年齢は日本と同じなのだが、田舎の方では足がなければなにもできない。警察も制服姿でバイクを運転している場合は無免許でも見逃してくれるようだ。だが、日本と同じで若さゆえに競走したり、暴走族のように傍若無人に振る舞う若者もいる。特に田舎だと娯楽が少ないので、そんな遊びに興じる子どもも出てきてしまう。さらに、タイは麻薬も身近な存在だ。日本ではありえないが、タイの中学高校では学校側が積極的に麻薬検査を実施するほど深刻でもある。
 それよりは報徳堂に預けておけば安心だし、実際に事件事故を目の当たりにして危ないことを控えるようになるしで、一石二鳥だと親も任せてくれる。表敬訪問したあるチームのリーダーは
「必ずチーム内で誰が面倒を見るかを決め、参加中はずっとその隊員と一緒にいさせます。もし彼らが活動に来ないときはこちらから親に電話をして、我々と一緒にいないということを伝えています。責任を持って預かっていますよ」
 と言った。バンコクではボランティアだけでも数千人はいるとされているので、未成年者を受け入れるのは管理的に難しい。地方ならではの対応である。
 他県では救急救命が意外な方法でも社会貢献をしているということを知ることができた。

チームによってカラーがまったく違う。
チームによってカラーがまったく違い、統率が取れているところもあれば、若者ばかりで楽しくやっているところもある。


地元企業や住民が待機所まで提供してくれている。
区域によっては地元企業や住民が写真のような待機所まで提供してくれている。右の方にいる坊主頭ふたりがこのチームの未成年隊員。

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  1. 2016/09/25(日) 18:03:17|
  2. 報徳堂
  3. | コメント:0

プロフィール

bangkokdayori

Author:bangkokdayori
●プロフィール
高田胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター
報徳堂ボランティア隊ホアイクワン005

1977年東京生まれ
1998年初訪タイ。その後旅行で何度かタイを訪れ、2000年から1年間、ユニオン・ランゲージスクールに語学留学
2002年9月からバンコク在住
2004年11月から華僑報徳善堂にボランティア隊員として参加
2011年2月に彩図社より「バンコク 裏の歩き方』(皿井タレー共著)、2012年8月に同社より「東南アジア 裏の歩き方」を出版
現在はバンコクに編集部がある月刊総合誌「Gダイアリー」に複数の連載やほぼ毎月特集記事を、ウェブサイト「日刊SPA!」やバンコクの無料誌「DACO」にて不定期で執筆中

http://nature-neneam.boo.jp/

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