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バンコク便り

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第16回「男よりも恐い!? 女性同士の闘い」

まるで日本の80年代な不良たち

 タイ人は全般的に酒の飲み方が下手だと常々思う。仲良しグループも酒の席ですぐにトラブルを起こす。些細な行き違いから口論となる。これが他人同士となれば、目が合ったといった「中学生か?」というレベルの理由でもみ合いになる。ときには殴り合い、集団乱闘事件に発展し、果ては殺人にまだ至る。当然日本でも酒のトラブルはあるが、タイはその件数が異常に多いと感じる。
 雑誌の取材で元ギャングの青年に話を聞いたことがある。そのとき彼は、基本的には仲間同士で楽しく飲むために集まるが、ときには乱闘が目的でパブなどに行き、わざとケンカをふっかけることもある、と言った。タイの不良少年少女たちは将来への不安や現実の不満などのストレスを正常な形で発散できていない。もがき苦しむ姿はまるで80年代90年代の日本の不良たちのようで、話を簡単に聞いた段階では妙に懐かしい気分になった。
 しかし、深く話を進めていくと、日本の非行少年たちの姿に通じるところはあっても、実際にはタイの彼らを取り巻く環境はよりシビアだということがわかった。なぜなら、富裕層が持つ経済的、政治的な強大な力や既得権益が山よりも高く彼らの前に立ち塞がっている。日本のようにがんばれば上に上がれるというものではない社会になっていて、中の下の階級レベルの彼らがどんなにあがいてもステップアップは難しいという事実に直面してしまう。
 別の取材で貧困層に話を聞いて回った際に感じたのは、この層の若者だと日々の生活に追われ、グレている暇がないようであった。マフィアの一員になって殺し屋になったり、麻薬売買の手先にさせられるなどはあるが、極端な例としてそういうのがある以外、ほかの若者は普通の青年たちだった。
 逆に余裕のある家庭の出身が不良少年化する傾向にある。タイの不良にはギャングや暴走族といろいろなタイプがあるのだが、いずれにしても働かずに仲間とつるんだり、学校の仲間と暴力行為に明け暮れたり、バイクを買い与えられてそれで公道レースに挑んだり暴走行為をする。パブにだって遊びに行けるくらいなので、僕からすれば不良たちは考えが甘いような気もする。インドのカーストと違い、絶対的に這い上がれないわけでもない。甘いからこそ大切なことを放棄して、ふて腐れるのかもしれないと僕は感じるのだ。

元ギャングの彼はその後子どもができたため足を洗っている。
元ギャングの彼はその後子どもができたため足を洗っている。今のギャングは昔より凶暴化していて、非常に危険な存在だと言った。


女性が殴り合う姿はショッキングだ…

 さて、そんな不良少年たちには必ず取り巻きの女の子がいる。バイク、女、酒は世界共通で悪い男たちとセットになっている。不良少年が連れ回す少女たちは16、17とかなり若く、素行が悪い子が多い。
 ラチャダピセーク通りは今でこそ鳴りを潜めたが、数年前までは巨大ディスコの「ハリウッド」や「ダンスフィーバー」、早朝まで飲めたレストラン「ポーグンパオ」などがあり、とにかく大盛況だった。一時期はラチャダー裏手のカルチャーセンターの通りまでパブ街が拡大した。ラチャダー・ソイ4のパブ街や「ハリウッド」などのディスコは入り口で年齢確認された。しかし、これらの繁盛にあやかろうとやって来た後発のパブは裏通りでの開業を余儀なくされ、仕方がなくなのか、あえてなのか、客を取るために年齢チェックはしなかった。そのため、20歳未満の不良たちはみな、こちらに遊びに来た。
 酒の飲み方をそもそも知らない未成年たちは目が合えば殴り合いを始める。かっこよさをアピールするために乱闘に加担する。少女たちも囃したてるので、男はさらに引けなくなる。そして、ときには不良少年についてきただけの少女同士も殴り合いを始める。
 現役ギャングの恋人だという少女に話を聞いた。そもそも乱闘を目の当たりにして恐くないのか。また、女性同士のケンカから逃げようと思うことはないのかと訊ねた。
「なんで? 友だちが闘っているのに、やらないわけにはいかないでしょ?」
 さも当たり前のように彼女は言い切った。
 女性はこうあるべきだという固定観念を押しつけたくはない。しかし、女性の殴り合いを見るのは強いショックを伴う。自分の妻や娘がこんなことをしたとしたら…。人の親として、少なくとも女の子には殴り合いはしてほしくはない。

不良グループに所属する少女。
不良グループに所属する少女はときにごく普通の女の子の顔を見せるときもあれば、理解しがたい考え方を話すこともあった。


ヒステリックにケンカをするのでなかなか止まらない

 僕が報徳堂の活動中に目撃した少女らの乱闘をいくつか紹介する。
 まず、どう見ても高校1年2年といった幼さの残った顔立ちの少女が10対10くらいで殴り合っていた事件だ。彼女たちもまた未成年であるが故、表通りのパブには行けず、ラチャダーのカルチャーセンター通りの店のひとつを訪れていた。深夜2時過ぎの閉店後、ぞろぞろと若者たちが店から出てくる。多くは30分近く、長いと1時間以上店の前でダラダラと喋っていく。せっかく盛り上がっていたのに店を出され、その興奮の余韻が残っている状態。人によってはこの状態を不満に感じるだろう。要するに、イライラが募り、最も乱闘が起きやすいタイミングだ。そんなときに起こった事件である。
 原因は罵り合いの言葉を拾うに、どちらかのグループの男性に色目を使っただのといったようなことだった。タイ人は酒飲みも下手だが、恋愛的な行為もまた下手で、陳腐なテレビドラマ並みの泥沼がそこかしこで演じられている。タイは婚姻届を出さないケースも多く、内縁関係にある世帯がかなりある。特に低所得者層に多く、恋人関係がある程度深まると、女性側が男性をフェーン(恋人)と呼ばずにプア(旦那)と呼び始める。この少女たちもプアがどうしたこうしたと罵り合っていたが、10代の子の発言にしては少々滑稽だ。もっと言えば、夫はサーミーといい、プアというのはちょっと田舎くさい乱暴な言葉なので、より彼女たちの育ちの悪さが目立ってくる。
 そして、そんなプアと呼ばれる男性陣は彼女たちの周囲に見られない。単に少女だけのグループがそれぞれやってきて、男性客の取り合いになったか、早々に連れの男たちは逃げたのかもしれない。こういった少女を取り巻くタイ人男性は人情もなにも持ち合わせていないので、面倒になったか、トラブルに巻き込まれたくなくて早々に立ち去ったのだろう。
 このグループのケンカはえげつなさが全開だった。男性の場合、人数にもよるが袋だたきはあまり見られず、1対1で殴り合うことが多い(日本の「卑怯」という考え方もないので、日本よりは袋だたき事件は多いけれども)。女性同士の場合は、数人でひとりを取り押さえて殴っていく。同時に仲間のひとりも相手側に押さえられてしまうが、男性よりもヒステリックになっていて周りが見えておらず、助けるという思考には至らないようだ。
 このときは、ひとりの女の子をふたりの少女が地面に押さえ込み、ほかの数人が順番に顔面をサッカーボールのように蹴っていた。律儀に彼女たちは並んで蹴っていた。さすがに僕らは止めに入った。アーサーの活動の中でやってはいけないことのひとつに「乱闘を止めない」ということがある。どっちに転んでも相手の仲間だと思われてしまい、のちに襲撃に遭う可能性があるからだ。しかし、これは男性同士のケンカに限っている。女性同士の場合は力も弱いので止めてもいい。なので、僕らは一応「もう十分だからやめなさい」と制止したのだ。
 別の日には似たような背格好の少女たちが、男性ふたり、女性ふたりのグループにくってかかっていた。これもほぼ前述の乱闘と場所がほぼ同じ、時間帯も深夜2時過ぎだった。表通りでもそうだが、やはりこの時間帯の暴力事件発生率はかなり高い。
 最初は少女たちとその女性の口論だったが、殴り合いになった。女性ふたりに対して少女たちは10人以上いたのでかなり不利だったが、女性も気が強いのか果敢に闘っていたし、それが事態を悪化させていた。最終的に男性が止めに入っていたが、結局我々アーサーの鉄則の通りに少女たちは男性が加担したと感じ、形勢不利と見たようだった。
 そんな少女の誰かに呼ばれた柄の悪そうな中年男性があとからやってきた。そして、相手の男性に向かって指を指していた、ように僕からは見えた。街灯の逆光で見えなかったからだ。そのとき、少女たちの声が響く。
「撃っちゃえ!」「殺しちゃえ!」
 中年男性は拳銃を手にして、男性の額にそれを突きつけていたのだ。タイ人は結構目がいい。暗いところでもかなりよくものが見えている。このとき僕は時間が経ってから拳銃が突きつけられていることに気がついたが、そのとき一緒にいたタイ人アーサーたちは中年男性が最初に突きつけたときから銃が見えていて、すぐに車の影に待避していた。僕だけがほぼ弾道に近い位置に立っていたのだった。
 その後、男性が少女たちに謝罪をしてその場は収まった。酔っていても男性の判断は賢明だった。銃が出てきたら、とにもかくにも降参しておくのがいい。銃とナイフだとナイフの方が危険度は高い。攻撃可能範囲が広いからだ。銃は距離は稼げるが、弾道上にないものを倒すことはできない。しかし、あの至近距離では相手を射るのは誰でも容易だ。軍や警察関係のよほどの熟練者でない限り、勝ち目はない。
 それにしても、撃てとは……。女性の乱闘は本当にショッキングだ。

タイではビールよりもウィスキーを飲む傾向にある。
タイでは酒税の関係でアルコールが高く、ビールよりもウィスキーを飲む傾向にある。アルコール度が高いからか、酩酊する若者のよく見かける。


元男性による、女性との乱闘の結末

 ほかの場所では20代後半くらいの女性の殴り合いに居合わせた。ぱっと見た感じは女性3対3の乱闘だったが、実際には女性は3人で、対する相手はニューハーフ3人だった。
 僕らはこの乱闘はルールに則って止めていいのか悪いのか、しばしわからずに眺めてしまった。タイは戸籍上の性別を変更できないので、法的には完全に男性だ。社会的にもタイでは女性と位置づける人は少ないので、その点でも男性である。しかし、見た目も心も彼らは女性だ。どうするのがいいのか、しばし悩んでしまう。止めるか止めないかでかなり近距離にいたので、女性の渾身の回し蹴りがニューハーフを空振り、僕の膝に命中して悶絶した。
 最終的にこの乱闘は収拾がつかなくなった様子を見た警察官が空に1発撃って、ニューハーフ側が静かになって収まった。この空への1発はもう最近は行われないが、当時はまだ集団乱闘を鎮める方法として採用されていた。しかし、これで収まるのは男性同士のみ。ヒステリックになった女性の耳に銃声は届いていないので、事態は決して収拾することはない。この乱闘でも女性は最後までキーキー叫び、掴みかかる勢いだった。逆に、ニューハーフの方が女性らしくシクシク泣きながら彼氏に抱きしめられるという奇妙な光景になった。タイで恐いのはギャングでも警察でもなく、女性なのかもしれない。
 レスキューのアーサーは正義感を持って活動するが、結局事後の処理しかできないのが現実だ。乱闘などはその事実をまざまざとアーサーを始めレスキュー関係者に突きつけてくる。お喋りなアーサーたちも乱闘シーンを目撃したあとはしばし黙り込んでしまう。

全盛期の「ハリウッド」ならば平日でも満席だったが…。
全盛期の「ハリウッド」ならば平日でも満席だったが、それはもう昔話。今はまったく噂も聞かず、事件も起こらない。営業はしていると聞くが風前の灯火か。
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  1. 2015/12/15(火) 06:04:28|
  2. 報徳堂
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プロフィール

bangkokdayori

Author:bangkokdayori
●プロフィール
高田胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター
報徳堂ボランティア隊ホアイクワン005

1977年東京生まれ
1998年初訪タイ。その後旅行で何度かタイを訪れ、2000年から1年間、ユニオン・ランゲージスクールに語学留学
2002年9月からバンコク在住
2004年11月から華僑報徳善堂にボランティア隊員として参加
2011年2月に彩図社より「バンコク 裏の歩き方』(皿井タレー共著)、2012年8月に同社より「東南アジア 裏の歩き方」を出版
現在はバンコクに編集部がある月刊総合誌「Gダイアリー」に複数の連載やほぼ毎月特集記事を、ウェブサイト「日刊SPA!」やバンコクの無料誌「DACO」にて不定期で執筆中

http://nature-neneam.boo.jp/

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