バンコク便り

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

第21回「国王崩御から10日 バンコクの様子」

国王がいかに敬愛されていたかを改めて感じる

 今回はレスキューとは若干関係ない内容になるが、タイの歴史が大きく変わったときの話を書いておきたい。
 今月13日の夕方、プーミポンアドゥンヤデート国王陛下が崩御したという非公式の情報がタイ人の間を一斉に駆け巡った。数日前にかなり容態が悪いことがニュースになり、近隣の市民が入院されていたシリラート病院に駆けつけるなど、その時点でこれまでの国王陛下の容態のニュースとは物々しさが違っていた。そして、13日の夕方に公式発表の準備をする国家公務員から漏れたと思われるメールがSNSを中心に出回り、同日19時に政府からの公式発表があった。
 日本の皇室とは違って、タイでは王室というよりもプーミポンアドゥンヤデート国王自身に人気がある。そのため、タイ国内ではおおっぴらに国王崩御によりタイがどうなるかという議論はされていなかったものの、国内外で王位継承権者たちによる争いがあるのではないか、また混乱によって大不況になるのではないか、という予測が密かにあった。実際、数年前から内戦を恐れて国外に移住したタイ人もわずかながらにいたほどだ。
 ところが、継承権第1位の皇太子が喪に服したのちに即位することが崩御した夜には発表され、タイ政府も公務員は向こう1年間は喪に服すこと、一般市民に関しては喪に服すことを強制はせず、向こう1ヶ月間だけ派手なイベントをしないように呼びかけたに過ぎない。日本人にとってはまだそれほど古い記憶ではない昭和天皇崩御した数日間と比べて驚くほどに差があった。むしろタイの場合はもっと暗い雰囲気になり、店もすべて閉まってしまうなどがあるのではないかと多くが思っていた。しかし、翌14日においてもすべてがいつも通りだった。企業や飲食店、小売店なども休業したのはほんの一部のみで、バンコク中心はいつも通り渋滞が発生していたし、タクシーも走り、ピザの配達人が働いていた。物乞いも道に座っていたし、夜のバーもほとんどが静かにだが開いていた。

至って普通の日々が営まれている
国王が崩御しても、渋滞は発生するし、ピザの配達も行われている。至って普通の日々が営まれている。


 ただ、街中は黒い服を着たタイ人で溢れていた。喪に服すことを強制されてはいなかったが、敬愛する国王陛下の崩御で悲しみを表して黒、あるいは白い服を着ていた。正直、僕自身は「案外みんな黒い服を持っているものだな」と思った。黒い服は喪服というわけではなく、あくまで黒ければTシャツでもなんでもいいのだが、さすがにそれくらいは持っている人は少なくなかった。また、商魂たくましいというか、市場や繁華街の服飾店ではちゃっかり黒い服が売られてもいた。さすがに商売人で喪に服すために安くするというわけでもなく、買えない人のために街中には染色を安価で引き受ける業者もはびこっていて、古いシャツを黒に染めてくれている。
 14日は昼過ぎから市内を歩いて見た。いつも通りの風景だったが、高架電車のスカイトレイン車内のテレビや街中の大型のビジョンは広告放送を取り止めていた。ATMを始め、多くの企業のホームページも白黒になっていた。ウェブサイト上の色合いはすぐにいじれるにしても、商業施設などで白黒の大きな横断幕が飾られていたのには、穿った見方をすれば事前に用意していたのではないかと思ってしまう。噂レベルではあるが、政府もこのところ計画していたイベントはすべて2パターンあったという。急遽崩御された場合に備えていたとは言われている。
 崩御からおよそ丸1日が経過した14日の16時半ごろ、伊勢丹が入居するセントラル・ワールド前の大型ビジョンではシリラート病院から王宮へと出発する国王の棺の車列が映し出された。多くの人が足を止めて見上げる。映像内では沿道にたくさんの人が集まっていた。昼過ぎの時点でセンセーブ運河の旅客ボートは定員オーバー状態でフル稼動していて、王宮近辺まで行くことも困難を極めた。そのため、プラトゥーナームで断念して伊勢丹前のビジョンでその様子を視聴する人も多かった。あくまでもテレビから車列を見ているだけだったにも関わらず、周囲からはすすり泣く声が聞こえてきた。
 10月22日には王宮広場で30万人(報道によっては15万人だとか数十万人)以上が集まって国王賛歌を歌った。このとき、僕自身は仕事であるコンベンションセンターにイベント取材に行っていたのだが、同じ時間に会場でも国王賛歌の合唱となった。おそらく、30万人どころか、タイ全土で一斉に歌われたのではないだろうか。
 タイで暮らしていると生活の端々に国王への想いを感じ取ることができるが、このときもまたプーミポンアドゥンヤデート国王陛下がいかに慕われていたかを改めて体感した。

商業施設では黒い服の売れ行きが好調
商業施設では黒い服がヒット商品かのごとく並べられ、売れ行きも好調のようである。



それでもタイは平常運転中

 日本人在住者たちがフェイスブックなどに書き込みをしているのは「タイ旅行を中止すべきかどうか」の問い合わせが多いということだ。どうも日本の報道はタイが混乱しているだとか、経済活動が停滞しているといった内容が多いらしい。僕自身の母親から「物資が不足していて買い出しに行かないといけないんだって?」と言われた。
 まったくもってそんなことはない。タイはむしろ平常運転だ。変わったことといえば、黒服が増えたことと、派手はイベントがないこと、バーや居酒屋などが通常深夜2時閉店のところ0時に閉めてしまうことくらいだ。確かに喪に服した公務員がそれを理由に様々な手続きを遅延させて景気に影響が出る可能性はあるかもしれない。しかし、崩御から10日たった現在、なんら崩御に関連した混乱は起きていない。そして、体感的にも大きな出来事は起こらず、平穏に時間が過ぎていくような気がする。

すすり泣く声もあちらこちらから聞こえた
買いものに訪れた人々が足を止めて大型ビジョンを眺める。すすり泣く声もあちらこちらから聞こえた。


国王陛下のニュースを見上げる人
伊勢丹の前の大型ビジョンで放映される国王陛下のニュースを見上げる人。


 タイ人はいい意味でも悪い意味でも、2006年から続く現在の政情不安に疲弊し、慣れてしまったのだと思う。だから、この数十年で最も大きな出来事となってしまった国王崩御でも落ち着いた行動が取れたのではないか。
 タイはあまりにも平常過ぎて、犯罪も普通に発生している。昨日は報徳堂の報道担当者間で作成されているLINEのグループによれば拳銃自殺まであった。
 日本と比べればタイの治安は元々悪い。その点ではなんら変化はなく、だから国王の崩御でタイ旅行を中止するべきかという問いに関して、僕自身は不要だと答えたい。喪に服すべきで、あまり派手な行動は慎まなければならないけれど、特に旅行を中止するほどの混乱はない。
 ただ、カオサン通りに泊まりたい低予算旅行者はちょっと検討が必要かもしれない。今は国王の棺が王宮に納められており、最後のお別れをしようとタイ全土からタイ人が駆けつけている。そのため、周辺は大混乱になっており、旅行者として滞在はしづらいと思う。
 王宮や王宮広場周辺ではバイクタクシーなどが王宮へ来た人々のために無料運行をしていたり、食べものや水を配る個人的なボランティアも増えている。報徳堂もまた昼間は本部が炊き出しをしているし、夜間は全国からやって来たボランティアが交代で食事を配布している。
 タイでは災害や事件が発生すると自発的に私財を投入した個人ボランティアが現れる。仏教国らしい一面でもあるし、今回の件に関してはいかに国王が愛されていたのかがわかり、また、こういった事態だからこそタイ人はひとつにまとまりやすいという国民性を見ることができたと思う。もう少し落ち着いたら、僕も報徳堂の一員として王宮の炊き出しに参加しようと思っている。

国王陛下の棺が移送された
14日16時30分ごろ、国王陛下の棺が移送された。セントラル・ワールド館内では同時刻にその事実と、国王を讃えるアナウンスが放送された。


ボートで棺が王宮に移される場に向かう人々
14日、シリラート病院から国王の棺が王宮に移される場に立ち会おうと、センセーブ運河のボートで向かう人々。プラトゥーナーム乗り場でこの時間帯にこれほどの人が集まることは普段はない。


棺の移送を見つめる守衛たち
仕事の手を休め、ビジョンに映し出される国王の棺の移送を見つめる守衛たち。

スポンサーサイト
  1. 2016/10/25(火) 14:00:32|
  2. タイ国王陛下
  3. | コメント:0
<<第22回「なぜか被害者が立ち去った事故現場」 | ホーム | 第20回「報徳堂のサラブリ支部にお邪魔してきた」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

bangkokdayori

Author:bangkokdayori
●プロフィール
高田胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター
報徳堂ボランティア隊ホアイクワン005

1977年東京生まれ
1998年初訪タイ。その後旅行で何度かタイを訪れ、2000年から1年間、ユニオン・ランゲージスクールに語学留学
2002年9月からバンコク在住
2004年11月から華僑報徳善堂にボランティア隊員として参加
2011年2月に彩図社より「バンコク 裏の歩き方』(皿井タレー共著)、2012年8月に同社より「東南アジア 裏の歩き方」を出版
現在はバンコクに編集部がある月刊総合誌「Gダイアリー」に複数の連載やほぼ毎月特集記事を、ウェブサイト「日刊SPA!」やバンコクの無料誌「DACO」にて不定期で執筆中

http://nature-neneam.boo.jp/

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (0)
報徳堂 (24)
タイ国王陛下 (3)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。