バンコク便り

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第24回「プライバシーを守ることを重要視している本部と隊員の意識」

タイ全体の風潮が変わってきた

 僕が初めてタイに来た1998年はまだスカイトレインも走っていなかったし、タクシーもメーター制と交渉制が混在していた。そして、テレビや新聞、雑誌では堂々と死体の写真が掲載されていた。
 ゴーゴーバーなどのパッポン通りに近いホアランポーン寺にある義徳堂支部のガラスケースには事件・事故の現場で死体回収をする隊員たちの誇らしげな姿が貼り出されていた。今でも初めて通ったときのことを憶えている。OLらしき女性たち3人がアイスを片手に列車に轢かれてバラバラになった死体の写真を見ているところだった。
 当時は毎週水曜日に「アチヤーガム」と「191」という雑誌が売られていた。20バーツくらいの値段で、カラーは数ページ。あとはわら半紙のような紙質。中身は死体の写真だらけの、いわゆるクライムマガジンと呼ばれるものだった。日本の男性向け週刊誌のような位置づけなのか、真ん中のページにはちょっとセクシーな女性の写真もあった。
 おもしろいなと思ったのは、そのセクシー女性の写真や女性の死体の写真ではだけた胸元が写っている場合にモザイクがかかっていることだった。セクシー女性はともかく、死体の女性の顔には一切のモザイクはない。本名も住所もさらけ出された上に、腐乱している場合でも顔にモザイクはない。隠す場所がそっちか、と思って見ていたものだ。
 タイのそういった性に関する規制は厳しい。ゴーゴーバーなどの売春施設がこれだけたくさんあるのにも関わらず。極端すぎるのは、アニメ「ドラえもん」でのび太が裸になってしまうシーンで全画面にモザイクがかかったり、犬の飼育本でゴールデンレトリバーの子犬の性器にもモザイクが入っていたりする。
 夕方や夜のニュースでも当時は普通に死体の映像が流れていた。子どもがプールで溺れたというニュースでは底に沈んだままの様子が映し出され、なんというか残酷だなと感じざるをえない画もよく見た。
 これが徐々に変わってきて、今では死体の画像や映像はマスメディアにはまず出なくなった。先のクライムマガジン2誌も完全に鳴りを潜め、どちらかが廃刊になり、残りは仏教ニュースに徹した雑誌に変貌している。
 恐らくだが、大きく変化したのはプーケットの津波からではないかと思う。当時、テレビや新聞、雑誌ではばんばん死体の写真は載った。しかし、欧米人などが不快感を示したのではないだろうか。
 気がついたらもうそういった死体写真はほぼなくなっていた。僕自身がそれに気がついたのは2009年2月23日だ。その前日にイタリア人がチャオプラヤ河の橋で首つり自殺をしたのだけれども、体重が重すぎたのか、首を括って飛び降りた際に首から下がちぎれ、生首がぶら下がる状態になっていたという事件があった。そのときの新聞の写真にモザイクがかかっていたことで、ふと「あ、タイもそういえば死体写真なくなったな」と改めて感じたのだ。

わざわざ手当の演技をしている
スマホが普及する2011年以前はそもそもカメラを持つ隊員も少なく、現場でカメラを構えると逆に隊員、被害者、野次馬含めて写りたがる人が多かった。2007年撮影のこの写真もわざわざ手当の演技をしている。


報徳堂本部もプライバシーに関して口うるさくなった

 僕が報徳堂に入隊したころはまだ都市伝説として「報徳堂の隊員は死体から金品を奪う」という話があった。当時はレスキュー=ポーテクトゥング(報徳堂)と呼ばれていた。タイで最近までコピー機をゼロックスと呼んでいたのと同じだ。だから、本部はその悪い噂を打ち消すために必死で、ボランティア隊員たちにけが人や死体の財産の扱い方に関して厳しく指導していた。
 その代わり、写真撮影などにはなにも指導はなかった。マスコミも国内外に関係なく、ちょっと電話すれば同行許可が降りるほどだった。それがやはり2010年前後を境にかなり変わってしまい、まずマスコミは取材申込みを事前にしなければならなかったし、そのときに死体の写真は撮ってはいけない、被害者の顔も撮るなといった制限が増えた。金を盗むという都市伝説が今はだいぶ風化したので、プライバシーの扱いにシフトしたようである。
 そんな中、報徳堂本部の報道関係のラインに本部のマスコミ対応担当者からメッセージが入った。著作権関係の内容だった。プライバシー侵害や被害者感情の保護などを気にし始めたことから“権利”というものを本部が慎重に考えるようになった。同時にタイ政府が法的にもSNSなどで権利の侵害をしている場合に罰金を科すということを発表したこともそのメッセージ発信に繋がったのだろう。
 報徳堂のグループラインは内輪のものだし、死体の写真は撮影者が隊員自身なので許容範囲としているのだが、本部の担当者は一部のグループメンバーが使用する、花や風景にタイ文字で挨拶や格言がポップとして記載される画像が気になったようだった。
「ライン上で、ダウンロードした画像などを使用している人がいますが、今後無断使用は法的に罰せられる可能性が出てきたので使用禁止です」
 こういった内容だった。基本的にすべて寄付金などで活動している団体としては悪い噂が収益に大きく影響するので、なにかトラブルを抱えることを非常に嫌う(それはどんな組織でも当たり前だが)。特に報徳堂は先の都市伝説への対応など、タイ人にしては珍しく先回りして対策を講じてきている。プライバシーに関しても、フェイスブックなどのSNSが普及するよりも前から動いていたほどだ。
 同時に、タイ人のSNSの拡散力が強くなっている。かつては中流階級以下は社会的な発言力がないに等しかったが、最近はSNSによって一般市民が富裕層の横暴を暴いたりすることもある。軍高官の未成年の娘が無免許で車を運転して乗り合いバンと衝突し9人が死亡した事件が2010年末にあったが、これまでならマスコミにスルーされていたような事件だったがSNSの拡散によって社会問題になり、犯人の少女は裁判にかけられた(その後の判決まではタイのSNSでは騒がないので、詰めが甘いところがあるが)。
 ちょっとしたきっかけがいわゆる“炎上騒ぎ”に発展するのはタイも同じだ。日本の同様の騒ぎと違うのは、ある程度正論を持って不正を糾弾することが前提になっている。日本の、例えばアイドルに恋人がいたなど、ファンが感情的になった無意味な炎上といったものは発生しない。報徳堂本部は内輪のSNS内のこととはいえ、万が一外部に叩かれてしまう可能性を恐れたのだろう。
僕自身は報徳堂のグループラインには書き込みはせず見ているだけだったこともあって、本部の注意書きには「タイも変わったなあ」という風に思うだけだった。
その本部メッセージの数分後、ライン上に新たな投稿があった。開いてみたら、
『了解!』
 というどこかから拾ってきた画像だった。
権利侵害がいけないことは知識としてはあっても、残念ながら行動と合致はまだしないようだ。タイらしいなと感じた出来事だった。

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  1. 2017/05/17(水) 20:14:08|
  2. 報徳堂
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プロフィール

bangkokdayori

Author:bangkokdayori
●プロフィール
高田胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター
報徳堂ボランティア隊ホアイクワン005

1977年東京生まれ
1998年初訪タイ。その後旅行で何度かタイを訪れ、2000年から1年間、ユニオン・ランゲージスクールに語学留学
2002年9月からバンコク在住
2004年11月から華僑報徳善堂にボランティア隊員として参加
2011年2月に彩図社より「バンコク 裏の歩き方』(皿井タレー共著)、2012年8月に同社より「東南アジア 裏の歩き方」を出版
現在はバンコクに編集部がある月刊総合誌「Gダイアリー」に複数の連載やほぼ毎月特集記事を、ウェブサイト「日刊SPA!」やバンコクの無料誌「DACO」にて不定期で執筆中

http://nature-neneam.boo.jp/

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