バンコク便り

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第9回「不謹慎だが、笑ってしまう現場もある その3」

空振りになる現場も少なくない

 前回前々回に続き、現場で起こったおかしな話をしてみたい。
 報徳堂に限らず、タイのレスキュー・ボランティアの救急車は管轄区域内の要所にて待機する。どの方向にでも出やすい交差点やガソリンスタンド、大通り、どこかの駐車場などで複数の無線を聞きながら、同じチームのほかの車がどこに待機しているかを考慮しつつ、管轄内で起こった事故や事件に急行する。
 ただ、空振りということも実は結構な頻度で起こる。通りかかったトゥクトゥクなどで自力で病院に行ってしまう人、もしくは加害者や現場の人が運んでしまうこともあり、通報を受けて急行しても現場には誰もいないことも多い。現場の人は無線を持っていないので急行中であることを知らないことと、どうも一般人の中に救急車は有料だと思っている人も少なくないからだと思われる。ときどき搬送中に「いくらですか」と訊かれる。確かに私立病院の救急車は有料だが、報徳堂や公共保健省の救急車が無料だということを知らないのだ。
 さらに、場所によっては目印がない、入り組んでいるので説明できないところがあったり、通報者がその場所の名称を知らないため、受け手のこちらでも混乱が生じることもある。

当時の本部のレスキュー車。
当時の本部のレスキュー車は緊急灯が古めかしくていい感じだ。


目と鼻の先で発生した事件で

 ある日、地下鉄のタイ・カルチャーセンター駅そばのガソリンスタンドで我々アーサーのグループが待機していた。その日は車が2台、総勢8人のメンバーだった。その日はほかの地域でも事件事故が少なく、無線は静かなものだった。そこに唐突に通報が入った。
「ラチャダー通り、カルフール向かいで傷害事件発生」
 ラチャダーのカルフール(当時)は我々の目の前だ。全員が「?」となりながら、歩道に立ち、左右や前方を見る。すると、一番右手に立っていたアーサーが「あっちだ!」と叫び、走り出した。わけもわからず僕も走り出す。そして、最初に叫んだアーサーが倒れている若者に駆け寄り、なにか叫んだ。続いてふたりめのアーサーも到着し、なにか叫んだ。
「・・・が出ている!」
 よく聞こえず、3番目についたのが僕だった。若者を見て、僕も叫んだ。
「腸が出ている!」
 その後、あとに続いた4人全員が「腸が出ている!」と叫んだ。どうやら人は腸が出た人間を見ると「腸が出ている!」と叫ぶようである。唯一叫ばなかったのは急いで救急車を回してきた運転手のみだった。

当時、現場に駆けつけたメンバー。
当時、現場に駆けつけたメンバー。


このあとは笑えない話になってしまった

 この若者は刃物で腹部を刺され、破れた腹から腸が出てしまった。と言っても、わずか数センチなので全部が出ていたわけではない。意識もはっきりしていた。
 珍しい光景にあたふたとアーサーたちはこの男に取りかかっていた。しばらくして、若者が倒れていた場所の目の前にあるイサーン料理(タイ東北料理)の食堂の店主が、アーサーたちの一番うしろにいた僕の肩を叩いた。
「あの、中に・・・・・・」
 もじもじしながら話しかけてくるので、てっきりゲイ男性かと思った。僕は肌が白いからか、そちら方面でも結構モテたので本当にそう思った。しかし、中に、中に、と何度も言うので見に行ったところ、店内にはもうひとり、メッタ刺しにされ血まみれの若者が横たわっていた。こちらはまさに虫の息だった。
 ちょうど到着した別働隊に店内の若者を任せ、腸が出た若者を僕らは病院に運んだ。無線でこの事件が殺人事件に切り替わったことを聞いた。
 搬送後に現場に戻る。警察の現場検証、監察医の到着待ちでしばし死体は放置された状態だったので、僕ともうひとりのアーサーが監察医の補助で死体をいじくり回し始めたときには顔面に大量の蟻がたかっていた。刺殺直前にウィスキー・コーラ(タイではウィスキーとコーラを混ぜて飲むのが一般的に)の飲んでいたので、その甘みに蟻が集まったようだ。
 その日はそのあとに数件ほど大きな事件がバンコクで起こり、この事件は報道されなかった。そのため、続報はないのでどうなったかはわからないが、そのイサーン料理店はなくなった。凶器もすべて店内にあったもの。最初の無線通報も別のレスキュー団体のアーサーが直接入れてきたもので、彼はその現場から逃走した者を見ていないという。これはあくまで僕の推測でしかないが、僕の肩を叩いたあの男がこのふたりを刺した犯人なのだと思っている。

事件事故の現場はいつでも騒然。
今回の現場に限らず、事件事故の現場はいつでも騒然とする。

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  1. 2015/02/16(月) 14:58:09|
  2. 報徳堂
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プロフィール

bangkokdayori

Author:bangkokdayori
●プロフィール
高田胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター
報徳堂ボランティア隊ホアイクワン005

1977年東京生まれ
1998年初訪タイ。その後旅行で何度かタイを訪れ、2000年から1年間、ユニオン・ランゲージスクールに語学留学
2002年9月からバンコク在住
2004年11月から華僑報徳善堂にボランティア隊員として参加
2011年2月に彩図社より「バンコク 裏の歩き方』(皿井タレー共著)、2012年8月に同社より「東南アジア 裏の歩き方」を出版
現在はバンコクに編集部がある月刊総合誌「Gダイアリー」に複数の連載やほぼ毎月特集記事を、ウェブサイト「日刊SPA!」やバンコクの無料誌「DACO」にて不定期で執筆中

http://nature-neneam.boo.jp/

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